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ブレゲ パンデュール・サンパティーク No.1の入札で競合を退け、

2025.06.30

フランソワ-ポール・ジュルヌ(François-Paul Journe)氏にとって、今回は絶対に譲れない一戦だった。今月ジュネーブで行われたフィリップスのオークションでは、ブレゲ パンデュール・サンパティーク No.1をめぐって数名の入札者が数百万スイスフランにも上る額を提示していた。だがその18Kイエローゴールド製のクロックと、それに付属する腕時計について、ジュルヌ氏ほど深く知る者はいなかっただろう。なにしろ、このタイムピースをおよそ35年前に設計・製作するようブレゲから委託されたのは、還暦を迎えたこのフランス人と、彼が率いるテクニーク・オルロジェール・アプリケ(THA)の仲間たちだったのだから。

1991年以来となる再登場を果たしたこの歴史的タイムピースを、ジュルヌ氏は何としても自分の元に取り戻したかった。彼は会場の最前列、左端に腰掛け、入札が10万スイスフラン刻みで上がるたびに、オークショニアのオーレル・バックス(Aurel Bacs)氏に向かって静かにうなずき、ブレゲスーパーコピー代引き 激安さらなる上乗せを示したのである。

5分以上におよぶ攻防の末、残ったのはジュルヌ氏と電話越しの入札者のふたりだけだった。ジュルヌ氏が再び灰色の髪を揺らしながら提示価格を450万スイスフランに引き上げると、ついに電話の入札者があきらめ、これ以上の応札はしない意思を示した。ハンマーが振り下ろされると、ジュルヌが支払うことに同意した落札価格は手数料込みで550万5000スイスフラン(日本円で約9億5600万円)。今回のオークションにおける最高額落札作品となり、現代のサンパティーク クロックとしては史上最高額を打ち立てた。

幸いなことに、この時計が再び人々の目に触れる機会はまもなく訪れる予定だ。ジュルヌ氏は約1年後の開館を目指して、自身の名を冠したミュゼ F.P.ジュルヌをジュネーブに開設する計画を進めており、そこにブレゲ パンデュール・サンパティーク No.1も展示されることになる。この展示スペースでは、独立時計師として世界的に評価されるジュルヌ氏の軌跡と作品を称え、その功績を広く紹介する。彼の手がけたF.P.ジュルヌの時計は、ここ数年のオークションや二次市場においても価値を急騰させている。

これは私が設計したものであり、20世紀の時計史における重要な作品だ。

– フランソワ-ポール・ジュルヌ氏
「1983年から現在に至るまでの自身の仕事を、時計史とのつながりとともに視覚的に紹介し、16世紀、17世紀、18世紀のアンティークピースを通じてその関係性を示す場所にしたい」と、フランソワ-ポール・ジュルヌ氏は博物館の目的について語っている。


Photo courtesy of Phillips.

 この博物館は、時計製造に着想を得た現代アートで彩られた空間に設けられる予定だという。場所は非公開ながら、F.P.ジュルヌのマニュファクチュールに近いジュネーブ市内に設置され、見学は完全予約制となる。 

 今回、巻き上げと分針のセッティングが可能なドッキング機構を備えた腕時計とのペアで構成されるクロックを、なぜそこまでして手に入れようとしたのかと問われると、ジュルヌ氏は「自分が設計したものであり、20世紀の時計史における重要な作品だからだ」と答えた。

 もっとも、この時計の設計者を自認するジュルヌ氏の主張は、ブレゲ パンデュール・サンパティークがTHAに製作依頼された当時、テクニカル・ディレクターを務めていたドゥ・ベトゥーン現クリエイティブ責任者、ドニ・フラジョレ(Denis Flageollet)氏の最近の発言と食い違いを見せている。

「このクロックの機械構造およびすべてのメカニカルコンポーネントは、私が設計、製作したものです。キャビネットの金属部品の調整も、THAの時計師ピエール-アンドレ・グリム(Pierre-André Grimm)氏およびヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter)氏とともに行いました」と、フラジョレ氏はオークション前にRevolution誌のインタビューで語っている。

 なおジュルヌ氏はこのRevolutionの記事や、フラジョレ氏の見解に対してコメントしていない。

 新設される博物館についても、展示内容の詳細は開館まで非公開とされており「サプライズにする予定だ」とジュルヌ氏は笑みを浮かべる。このため、運よく予約を確保できた来館者がどのような展示に出合えるのかについて、期待と憶測は高まるばかりだ。

 近年のジュルヌ氏は、ジュネーブで開催されるオークションにも積極的に姿を見せ、自身の過去の作品を多数買い戻している。その一例が今回サンパティーク No.1を手に入れたのと同じフィリップスのオークションで、13万9700スイスフラン(日本円で約2400万円)で落札したクロノメーター・スヴラン “ドバイ・ブティック” 限定のグリーンダイヤルモデルである。「博物館のためだけに多くの時計を買い戻しているわけではありません。コレクションはすでに充実しています。機会さえあれば、“パトリモワンヌ(遺産・歴史)”のために購入しています。それは博物館の収蔵とは別の目的なのです」とジュルヌ氏は語る。


Photo courtesy of F.P.Journe

 ジュルヌ氏のコレクターとしての足跡について、わかっていることがいくつかある。彼は希少で、そしてときに複雑な構造を持つステンレス製の懐中時計を情熱的に収集しており、そのコレクションは、ジャン=クロード・サブリエ(Jean-Claude Sabrier)とジョルジュ・リゴ(Georges Rigot)によってまとめられた312ページにわたる書籍にも記録されている。


Photo courtesy of F.P.Journe

 また関係者によれば、ジュルヌ氏はブレゲの作品を含む多くの時計やクロックを私的に所有している。そうしたピースは、彼自身の創作活動を歴史的な視点から紹介するうえで、展示の中心となる可能性が高い。

 彼のコレクションのなかでも特に重要とされるのが、1780年にフランスの時計師アンティード・ジャンヴィエ(Antide Janvier)によって製作された、共振式レギュレータークロックである。ジュルヌ氏はこの掛け時計を、自身のクロノメーター・レゾナンスと、創作の原点となった18世紀の時計製造とを結びつける存在だと位置づけている。

 もっとも、この貴重なクロックは現在、ブランド本社の会議室にひっそりと置かれている。新設される博物館にこそ、ふさわしい作品といえるだろう。一方で、建物のエントランスに設置されているC.L.デトゥーシュ(C.L. Detouche)の天文時計や、同じ場所にあるジャン=クロード・サブリエの蔵書ライブラリーなどは、現状の設えから移動を想像しにくい。

1983年から現在に至るまでの自身の仕事について歴史との関係性を視覚的に示し、16〜18世紀のアンティーク作品をとおしてそれを表現したいのです。

– フランソワ-ポール・ジュルヌ氏
 彼自身の作品についても、それらを歴史的文脈のなかに配置してキュレーションすることで、ジュルヌ氏が“自らの仕事の本質”をどのように捉えているかを示す場となるだろう。たとえば、トゥールビヨン・スヴランやクロノメーター・レゾナンスといったモデルには、顧客や販売店、記念周年などの要望に応じて、ムーブメント、ダイヤル、ケースに多彩なバリエーションが存在する。そのため展示は、あらゆる個体を網羅する“完全主義的”なものではなく、むしろ深く考え抜かれた構成になる可能性がある。

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karinaaespa Mail URL(07/02 13:20) 修正

この展示は、フランソワ-ポール・ジュルヌ氏の時計づくりに対する哲学や美意識を浮き彫りにする絶好の機会ですね。モデルのバリエーションの多さではなく、選び抜かれた個体で彼の核心を伝える構成に期待が高まります。

garden Mail URL(07/02 16:44) 修正

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この若き独立系ブランドにとって初となるラウンド型時計は、

2025.06.30

ブランドを率いるのは、アーレン・バゼルカニアン(Aren Bazerkanian)氏。かつて不動産業に従事し、F.P.ジュルヌのブティックマネージャーも務めたという異色の経歴を持ち、正統派のヴィンテージリファレンスに深い愛着を抱く野心的で起業家精神に富んだ人物である。クラシック・ワンは、クッションケースのHN00に続くハヴィッド・ネイガンにとって2作目のケースを持つ、初のラウンド型時計である。

The Havid Nagan Classic One on the wrist
パテック フィリップスーパーコピー代引き 激安のRef.96にインスパイアされたクラシックなダイヤルレイアウトを採用したクラシック・ワンは、同様に“ドレスウォッチ”とひと括りにされがちである。しかし、それ以上の存在であるようだ。初代カラトラバや、バゼルカニアン氏が着想を得たほかのネオ・ヴィンテージモデル(その詳細は後述する)のように、このモデルも“何でもできて、どこへでもつけていける”3針時計である。クラシック・ワンは徹底してモダンなダイヤルデザインと、伸びやかなラグを備えた見事なケースフォルム、理想的なサイズバランスを特徴とする。

「クラシックなプロポーションのラウンドウォッチを作りたかったんです。そして、それは38mm径でなければなりませんでした」とバゼルカニアン氏は語る。ハヴィッド・ネイガンの創業者は、そうした信念の持ち主である。彼は自身のデザインが製品化、最終的には購入に値するものであるという確信を持っている。とりわけ彼自身のビジョンに対して確信を持っており、それは30代にしてスイスとの直接的なつながりも、時計製造における家系的背景も持たない人物としては驚くべきことであった。そしてそこに、このブランドが持つ一種の魔法がある。もし時計デザインにおける古くからの不文律が存在するとしても、バゼルカニアン氏は自分がそれを破っているかどうかすら知らないのだ。そして、それがハヴィッド・ネイガンの魅力につながっている。「自分自身のための何かを作りたかったんです」と彼は語る。「そして幸運なことに、少なくとも今のところ、多くの人々がそれを理解し、支持してくれています」。しかしクラシック・ワンに関しては、単なる幸運と呼ぶ以上のものがある。

The Havid Nagan Classic One
プロジェクトがバゼルカニアン氏の頭のなかで具体化し始めたのは、ドバイを訪れ、リテールパートナーであるパーペチュアル・ギャラリーに足を運んだときである。創業者ハムダン・アル・フダイディ(Hamdan Al Hudaidi)氏のオフィス内、フィリップ・デュフォーからバルチックに至るまでの時計が並ぶテーブルの上で彼の目を引きつけたのは、ピンクゴールドのパテック Ref.96のクリーンなデザインと完璧なプロポーションであった。「それまでヴィンテージのカラトラバを見たことがなかったんです」と彼は言う。「ミニッツトラックやダイヤル上の配置の美しさに衝撃を受けました」。旅から戻るとすぐに、バゼルカニアン氏はのちにクラシック・ワンとなるデザインに着手した。

最近、初めて新しい時計を手に取るときにひとつの新しいアプローチを試みている。これはゴルフ界のスポーツ心理学者から拝借したもので(私のYouTube履歴を語りすぎかもしれないが)、ネガティブな自己対話をするプレイヤーに対し、“感動の余地(room for wow)を残す”よう指導するというものだ。ボールを打ち、結果を観察し、意図的な結論を下さず、自然な反応を待つという方法だ。ゴルフでは「なんてひどいショットだ」となることもあれば、「これはすごい!」となることもある。時計においても、「これは自分には合わないかもしれない」や「これはかなりいいかも!」と感じることがある。

The Havid Nagan Classic One
ハヴィッド・ナガンについて記事を読み、HN00の写真を見て、2022年当時の自分は「これは自分向きではない」と早合点していた。だからこそクラシック・ワンに関しては、感動の余地を大いに残すように努めた。同じブランドの製品であっても、まったく異なる時計の評価に先入観が影響するのは不公平である。あの初代ハヴィッド・ナガンを覚えている読者には、その印象がどんなものであったにせよ、ここはぜひ最後までついてきて欲しい。

クラシック・ワンは3種のバリエーションで展開され、それぞれ異なるダイヤルを備えている。基本的には直径38mm、厚さ9mmのステンレススティールケースに、複層構造のダイヤルを採用した3針時計であり、心臓部にはCOSC認定を受けたCal.AMT6600を搭載する。細部に至るまで熟考が重ねられており、少なくとも私としてはデザインに対しての過剰との批判を回避していると評価できる。なお、試作機のひとつが今月初めにフィリップスにて出品され、フィリップ&エリザベス・デュフォー財団のためのチャリティオークションにおいて、推定価格を上回る2万5400スイスフラン(日本円で約440万円)で落札された。

The Havid Nagan Classic One movement
この時計に動力を与えるのは、AMT製の特注ムーブメントである。AMTはセリタの事業部門であり、ハヴィッド・ナガンのような独立系ブランド向けにカスタムキャリバーを専門に製造している。当初はラ・ジュー・ペレのCal.7380を使用する計画であったが、バゼルカニアン氏はその超薄型ムーブメントでは得られない、より豊かな視覚的奥行きを求めた。その結果、厚みのあるムーブメントでありながら、ケースに完璧にフィットし、一体感が感じられるという希有なプロダクトとなった。ムーブメントのブリッジにはスケルトン加工が施され、ルテニウム仕上げに加え、5Nローズゴールドの差し色が加えられている。RGの地板をはじめとする仕上げの選択は、部分的にデレク・プラット(Derek Pratt)がウルバン・ヤーゲンセンのために製作したオーバル型懐中時計からインスピレーションを得たという。COSCの認定を受けているという点も、予想外ながら好印象である。

 ダイヤルは“タマネギのように層を成している。パテック Ref.96に見られる粒状の分目盛りは現代的に再解釈され、透明なサファイアリングにプリントされており、それが2枚の真鍮製ディスクに挟まれる構造となっている。下層のディスクにはクル・ド・パリ・トロンケ(ギヨシェ)が施され、色はアイボリーまたはルテニウムだ。このギヨシェは、クル・ド・パリのピラミッドの頂点を切り取ったようなもので、オーデマ ピゲのタペストリー模様に似た視覚効果をもたらす。上層のディスクはメインのダイヤルを形成し、カラトラバ様式のバトン型インデックスを配置している。この仕上げは非常に控えめで、腕に載せた際にはフラットな光沢を示す程度である。私が扱ったふたつのバリエーションに使われていたアイボリーカラーは、1980〜90年代のショーメ時代のブレゲに見られる、ホワイトともシャンパンとも言えない中間色からインスピレーションを得たという。バゼルカニアン氏はRef.3337BAを所有しており、それをとても気に入っている。

The Havid Nagan Classic One
The Havid Nagan Classic One
The Havid Nagan Classic One
 私は現代的なケースにはうるさく“ケースクイーン”を自認しているが、このケースデザインは本当に秀逸である。38mm径というゴールデンサイズに加え、ラグからラグまでが47mmという伸びやかなラグと、随所に施された見事なディテールが際立つ。ポリッシュとブラッシュの絶妙な組み合わせに加え、バゼルカニアン氏は段差のあるベゼルについて「ネオヴィンテージのパルミジャーニ・フルリエやウルバン・ヤーゲンセンを意識しました」と語っている。また、ツイストしつつスカラップ状にえぐられたラグの造形は目を引くが、全体のデザインとの調和も取れている。

 1万ドル以下の3針時計として、これは非常に有力な候補といえる。熟考されたディテールと緻密な構造美を愛する者にとって、このモデルはまさに理想的な一本だ。“感動の余地”を残して接したあとで私が思ったのは、このハヴィッド・ナガンはもしかすると、ロンジンのトレタケやIWCのハーメットのような、クラシックでありながら万能な“現代版ミッドセンチュリーウォッチ”の決定版になりうるのではないか、ということであった。スーツにも水着にも合う、そんな時計である。

The Havid Nagan Classic One
基本情報
ブランド: ハヴィッド・ナガン(Havid Nagan)
モデル名: クラシック・ワン(Classic One)

直径: 38mm
厚さ: 9mm
ケース素材: 316L ステンレススティール
文字盤色: アイボリー、エボニー、ゴースト
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ジャン・ルソー製によるカスタムレザーオプション

ムーブメント情報
キャリバー: AMT6600
機能: 時・分表示、スモールセコンド表示
パワーリザーブ: 62時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21
クロノメーター認定: COSC認定

コメント一覧

rosie Mail URL(07/02 13:22) 修正

「美しさと実用性を兼ね備えた一本。欲しくなりますね。」

ブランドコピー URL(07/02 15:25) 修正

ブランドコピーのドットが織りなすロゴデザインは、遠目からも目を引く存在感があり、ストリートファッションらしい遊び心を感じさせる。

ブライトリングはプラチナ製ケースを採用した24時間表示のプレミアムナビタイマーを、限定モデルとして発表した。

2025.06.30

熾烈をきわめた時計界の“宇宙開発競争”において、ブライトリングは確固たる実績を持つ。スイス・グレンヘンに拠点を置くこのブランドは、宇宙で初めて着用されたスイス製腕時計を生み出したという誇るべき歴史を有している。その歴史は1962年にさかのぼる。NASAのマーキュリー・アトラス7号ミッションにおいて、アメリカ人宇宙飛行士スコット・カーペンターが特別仕様のナビタイマーを宇宙服の上から着用し、地球を3周したのだ。この特注モデルには24時間表示のダイヤルと幅広のベゼルが採用されており、これこそがのちの市販モデル、コスモノートの原型となった。そして本日、ブライトリングはこのコスモノートラインと、1925年生まれのスコット・カーペンターの生誕100周年を祝し、貴金属であるプラチナ製ケースを採用したプレミアムなリミテッドエディションを発表した。

今回のタイムピースは、ブライトリングスーパーコピー代引き 激安コスモノート本来の目的と機能に忠実である。カーペンターが要望した、昼夜の区別を明確にするための特徴的な24時間表示ダイヤルを備え、急速に昇り沈む太陽の下での軌道飛行中でも時間の感覚を保つことができる仕様となっている。さらにナビタイマーの代名詞ともいえる回転計算尺を搭載しており、電子機器に頼ることなく各種計算が可能だ。そしてもちろんクロノグラフ機能も備え、計時においても万全を期している。

この限定モデルではダークブルーのダイヤルにホワイトの回転計算尺、アラビア数字、インダイヤルを組み合わせ、明快なコントラストを演出している。クロノグラフの秒針およびいくつかの数字には鮮やかなレッドが差し色として用いられ、視認性とデザイン性を両立している。コスモノートにおけるブルーダイヤルの採用は今回が初めてではないが、この色味はオリジナルモデルに見られる伝統的なブラックよりも希少な存在である。

このハイエンドバージョンを際立たせている最大の特徴は、Pt製のケースである。わずか50本限定で展開されるこのモデルは、定評のあるケース形状に、貴金属特有の重厚感と価格的価値を加えている。カーペンター センテナリーと名付けられたこの特別なモデルは638万円(税込)に設定されており、ダークブルーのアリゲーターストラップと18Kホワイトゴールド製のバックルが組み合わされている。

裏側にはねじ込み式のPt製シースルーバックが採用されており、そこにはスイス製腕時計として初めて宇宙で着用されたブライトリングの実績、限定本数、そしてスコット・カーペンターの生誕100周年(1925〜2025年)を記すエングレービングがあしらわれている。サファイアガラス越しに見えるムーブメントは、手巻きの機械式クロノグラフCal.B02だ。ブリッジ部分には、カーペンターおよびミッションにまつわる注釈が彫られており、搭乗したカプセル“オーロラ7”、地球周回数、そしてNASA初の宇宙飛行士チーム“マーキュリー7”の名が記されている。これらのエングレービングは、2022年に発表されたブラックダイヤル&スティール製ケースのナビタイマー コスモノート60周年記念限定モデルにも用いられており、そちらの価格は(レザーストラップ仕様で)134万2000円(税込)であった。

我々の考え
プラチナケース、緻密なエングレービングが施されたムーブメント、そして強気な価格設定。これらの要素から見ても、このモデルがブライトリングの名作コスモノート タイマーのウルトラオートラグジュアリー版であることは疑いようがない。本機は時計がツールであり、所有者にとっての実用機器であった時代の重要な歴史的ピースを、贅沢に再構築したものである。カーペンターは過酷な宇宙飛行任務においてアナログ形式で重要なデータへアクセスできるよう、任務に特化したカスタムウォッチをブライトリングに直接依頼した。宇宙開発がまだ黎明期にあった当時、こうした仕様はきわめて重要であった。

もっとも、カーペンターのミッションは必ずしも完璧に進行したわけではない。打ち上げおよび軌道飛行中はこの時計が完全に役割を果たしたものの、帰還時には予想外の展開となった。着水地点が大きく外れ、予定より250海里もずれた海域に落下したのだ。彼は大西洋上でおよそ3時間にわたり救命ボートで待機し、ようやく発見されるという試練を乗り越えた。

実際に宇宙で使用された、海水によるダイヤルの損傷を受けた最初のスイス製腕時計。Photo courtesy of Breitling.

海水に浸かったことで、カーペンター救助後まもなくしてこのコスモノートのプロトタイプは動作を停止した。ブライトリングはその後、カーペンターをはじめとするNASAの宇宙飛行士たちに新たなバージョンの時計を提供し、彼らはそれを任務中にも引き続き着用した。一方でこの損傷を受けたオリジナルのプロトタイプ、すなわち宇宙で着用された最初のスイス製腕時計は、長らくウィリー・ブライトリングとその家族によって厳重に保管されてきた。深く傷ついたダイヤルを持つこの時計は、2022年、ジェフ・スタインによるスコット・カーペンターとコスモノートに関する詳細な記事で初めて公の場に姿を現した。スタインが指摘するように、この時計はもともと海上ではなく宇宙空間で機能するように設計されていた。実際、その目的においてこの時計は見事に役割を果たしていたのである。

宇宙で最初に着用されたスイス製腕時計と、それをともにつくり、着用した宇宙飛行士の物語に心を打たれる者にとって、カーペンター センテナリーはそれを称える究極の方法となるかもしれない。派手なイエローゴールドのケースや奇抜なダイヤルではなく、選ばれたのは重厚(かつ高価)なプラチナの存在感と、任務に即した実用性を持つ機能的な文字盤。これは任務での実績によって証明されたタイムピースであり、まさに“高性能なラグジュアリー”と呼ぶにふさわしい1本である。

基本情報
ブランド: ブライトリング(Breitling)
モデル名: ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート スコット・カーペンター センテナリー(Navitimer B02 Chronograph 41 Cosmonaute Scott Carpenter Centenary)
型番: LB0240211C1P1

直径: 41mm
厚さ: 13mm
ケース素材: プラチナ
文字盤: ブルー
インデックス: アプライド
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブルーのアリゲーターレザーストラップ、18Kホワイトゴールド製フォールディングバックル付き

ムーブメント情報
キャリバー: ブライトリング マニュファクチュール B02
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示、クロノグラフ
直径: 30mm
厚さ: 6.83mm
パワーリザーブ: 約70時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 39
クロノメーター: あり

価格 & 発売時期
価格: 638万円(税込)
発売時期: 発売中
限定: あり、世界限定50本