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「HK-17」テクニカル・インフォメーション
ロフチン・ホワイト型 300Bシングル・ステレオパワーアンプ

本機は管球王国Vol.52で頒布をしたモデルです。ご好評にお答えして引き続き販売いたします。
■本機は「管球王国Vol. 52」発表機です
■このページの技術情報は試作機の実測データが記載されています。素子のバラツキ等で個々の製品の特性は若干異なります。
■サンプル機試作後の検討で,一部設計が変更されているモデルもございます。
■詳細はメールにてご案内いたします。お気軽にお問い合わせ下さい。

<各写真はクリックで拡大します>
 
『試聴室のご案内』
 
 
■HK17特性データ■   ■HK-17の回路図・実体図■
モデル概要 ■ロフチン・ホワイト型300Bシングル・ステレオ・パワーアンプ
■整流管整流
■自己バイアス方式
■300Bフィラメント定電圧点火・ハムバランス無調整化
■ECC82/12AU7によるSRPPドライバー回路採用
■音量調整ボリューム
■無帰還アンプ
使用真空管 300Bx2本 ECC82/12AU7x4本 5U4G/GBx1本
定格出力 5.8W 8Ω負荷 周波数1kHz ひずみ率5%時の出力
最大出力 6.7W 8Ω負荷 周波数1kHz ひずみ率10%時の出力
周波数特性 10Hz〜30kHz ±0.5dB以内 出力1W 8Ω負荷時
ひずみ率特性 0.5%以下 1kHz/10kHz/100Hz 出力0.5W時
ゲイン 24dB 周波数1kHz
NFB 無帰還
入力端子 アンバランスRCA端子・入力インピーダンス100kΩ
出力端子 8Ω,16Ω(または4Ω,8Ω対応可)
残留雑音 1mVrms以下
搭載トランス・型名 出力トランス:XE-20S・・ISOカタログ品
電源トランス:S-2474・・ISO特注品
チョーク:EC-8-200S・・ISOカタログ品
AC電源・消費電力 AC100V 50/60Hz 140W(無信号時)
寸法・重量 (W)370x(H)60x(D)255mm・・・シャーシの寸法
トランス,ゴム足含む高さ:約210mm
重量:約12kg
付属資料 回路図・実体配線図・部品表

■本体と真空管セットの価格は消費税・送料を含みます。
(沖縄県・離島の方への送料は別途お知らせします)

■真空管のブランドは代理店の在庫都合等により変更の可能性もあります。
本体パーツ・キット 真空管を除く全パーツセット ¥140,000
真空管セット 300B・Golden Dragonペアー(2本組)選別品
12AU7x4  5U4G/GBx1 
¥45,000
完成品 組立は手配線・調整済 ¥215,000
■「HK-12」特注トランスの販売
電源トランス・1個 ISO特注トランス・「S-2474」 ¥20,000
■出力トランスは「XE-20S」
■チョークコイルは「EC-8-200S」 いずれもISOカタログ品です。詳細はこちらから。
 
「HK-17」の音質(管球王国Vol.52抜粋)
本誌42号でご紹介した300Bシングルアンプ「HK-12」と比較してみました。設計検討の上ではHK-12から1個のカップリング・コンデンサを取り去るだけという結論に達した本機ですが、これにたどりつくまでの労力に多大な時間を費やしたロフチン・ホワイトアンプです。

両機での比較の結果では、それほど大きな変化があるわけではありません。これはむしろ当然のことで、1個のカップリング・コンデンサを取るだけで音が“激変した!”としたら、HK-12の音は何だったろう?ということになります。

しかし、よく聴きこんでいきますと、ロフチン・ホワイトアンプに落ちついた品格の高さみたいなものを感じます。よく伸びた高域は刺激もなく心地よい響きで聴こえてきます。ピアノのリアルさ、粒立ちの良さ、艶やかな女性ボーカル、弾力性豊かなベース、薄いベールではありますがコンデンサ結合アンプに比べひと皮むけた印象です。

300Bアンプはどちらかというと透き通る高域の美しさに目を奪われがちです。しかし、本機のピラミッド型に定位するバランスの良い再生音は奥行き感も伴い、またひとつ300Bの魅力を引き出せたアンプに仕上がっています。

300Bシングルアンプに、さらなるブレークスルーを求めるクラフトマンの方は是非直結型ロフチン・ホワイトアンプにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



管球王国の頒布では多くの皆様から頒布のお申し込みを頂きました。頒布に先立ち試聴をお願いしたユーザーからのレポートも届いております(→)。どうぞ皆様、一味異なる300Bシングルアンプ『HK-17』をお手元でお聴きいただければ幸いです。
 
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■ロフチン・ホワイト回路について
1926年頃にロフチン氏とホワイ氏の両名から、ドライバー段と出力段が直結された回路が提案され、後にこの直結回路を『ロフチン・ホワイトアンプ』と命名されたました。左にご紹介した回路図はその原型をなす回路図です。

当時の直熱三極管アンプは、段間トランスでドライブするのが主流でした。出力段とドライバー段は一個のカップリング・コンデンサでつなぎ、前段とは直流的に切り離してしまえば事足りるわけですが、当時は高圧に耐える良質のカップリング・コンデンサもない時代でもありました。

ドライバートランスと言えば、これも現代のような高品質トランスが存在するわけもありません。

そして、当時の直熱三極管はグリッド電流が流れやすく、バイアスの深い直熱三極管をドライブするのに困難を伴い、カップリング・コンデンサーを排除した前段との直結回路は、出力段のドライブもしやすくなります。ロフチン・ホワイトアンプはこれら直熱三極管の使いにくさを一挙に解決してしまうわけで、当時としてはまさに画期的な回路提案であったものと容易に想像できます。

しかし、直結回路はパワーオン後各段が安定動作になるまでの時間差により、出力段のグリッドに高圧バイアスが印加され大きなプレート電流が流れてしまいます。この結果プレートが灼熱状態、いわゆる“七面鳥アンプ”とも言われる暴走現象が生じてしまいます。

この現象はドライバー段が抵抗負荷回路の場合は特に顕著になり、電源投入時の暴走現象を回避するには遅延回路など様々な工夫が必要になるわけですが、一個のコンデンサを取るためだけの回路としては、洗練された回路とは思えないスマートさに欠ける回路になってしまうのが一般的です。

上図のロフチンホワイトアンプ原型回路ではこの暴走を軽減するため、初段のプレート電圧は+B電源にシリーズに入れられたブリーダー抵抗を介して出力管のカソード(フィラメント)へ落とし、出力管が立ち上がる前にグリッドバイアスの電圧を制御する対策がとられています。しかし立ち上がりのタイミングは微妙な回路定数の設定が要求され、この回路も決してスマートとは言い難い難しさを持ちます。

   
■HK-17の直結回路について
そこで改めて直結回路の実験をしてみました。直結回路は様々な回路が考えられますが実験でトライした結果では、ドライバー段をSRPP回路にすることで立ち上がりのタイミングに配慮することなく出力段と直結できることが判明しました。

結果としては極めてシンプルな回路にたどりついた感がありますが、これら実験結果を踏まえて左図のとおり、SRPPドライブによる300Bシングル・ロフチンホワイトアンプが完成したのです。(全回路図)

しかしSRPPといえども電源投入時の300Bのプレート電流を完全に制御しているわけではありませんが、実験の結果からは少なくとも300Bへ与えるダメージは全くありません。
 
電圧増幅部初段部は12AU7を2ユニットパラレルに接続した抵抗負荷型電圧増幅回路です。この回路は最近定番化化していますが300Bの中高域のキャラクターを損なうことなく低域のふくよかさを期待して12AU7のパラ接続を採用しています。この段での電圧ゲインは24dBに設定し、プレート電流は2ユニットに約3mA流しています。パワーアンプの初段部はいわばプリアンプ的要素を持ちますので、この段での音質はパワーアンプ全体に与える影響は少なくありません。

ドライバー段は上述のとおり12AU7のSRPP回路を採用しています。SRPP回路の音質傾向は中高域が綺麗になる方向ですが,ドライバー段のSRPP回路はアンプ全体に及ぼす影響は初段部ほどは大きくはありません。しかしながらSRPP回路でのドライブは大きなドライブ電圧を確保できる上、出力インピーダンスも低くバイアスの深い300Bを十分にドライブできる優れた回路です。同時に300Bの持つ中高域の美しさをより引き出すことが期待できるドライバー回路とすることができます。

■300Bの自己バイアス抵抗・プレート電流は60mAに設定

300Bの自己バイアス抵抗 <拡大>
自己バイアス回路のロフチンホワイト回路はカソード抵抗が大きくなり、ドライバー段とC結合された自己バイアス回路と比べ高いB 電圧が必要となります。

本機では整流管整流を採用しましたので整流電圧の実測は463Vと若干低めの動作になります。300B のプレートには438V、グリッドバイアスは(+)100Vを与えます。

この結果カソード抵抗は2.5kΩでプレート電流が約60mAになる定数設定です。カソード抵抗は2kΩ(20W)と500Ω(10W)に分けていますが、2kΩ側の熱損失は7.2W、500Ω側は1.8Wの熱損失になります。

 
■電源投入後のプレート電流の変化


「POWER ON後のプレート電流の変化」
電源投入から定常状態になるまでの300Bのプレート電流の変化を観測しますと、パワーONから約4秒後にプレート電流が流れ始め、約7秒後に最大電流に達し、この時のプレート電流は90mAです。

最大電流は約1秒間流れその後60mAで定常動作状態になります。定常状態になる前の1秒間90mAが300Bのプレートに流れますが、この時の300Bのプレート損失は25W前後ですので、300Bのプレート損失の最大定格40Wには十分余裕があります。

HK-17はこれでプレート赤熱状態もクリアーでき、300Bにダメージを与えることがない直結アンプとすることができます。

 
■300Bのフィラメントは定電圧点火

 <拡大>
HK-17の300Bフィラメントは低格5V 2Aの三端子レギュレータ(AVR)による定電圧点火方式が採用されています。

これによりフィラメント回路の整流リップルが大幅に軽減できます。この結果調整が面倒なハムバランサを排除しています。

AVRによるフィラメント点火は残留ノイズもほぼ1mV以下(実験機の実測は0.3mV)とすることができ、効率の高いスピーカーをつないだときのフィラメントハムをほぼ皆無とすることができ、その結果『静寂感』を伴った見通しの良い再生音が得られます。

 
HK-17は東京・八王子のアスタリスク『Sand Glass試聴室』でお聴きいただけます。機会がございましたら是非お出かけ下さい。

HK-17のご購入ご希望の方は上記アスタリスク『試聴室』、又は大西宛メールにてご連絡下さい。
 


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