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この若き独立系ブランドにとって初となるラウンド型時計は、

2025.06.30

ブランドを率いるのは、アーレン・バゼルカニアン(Aren Bazerkanian)氏。かつて不動産業に従事し、F.P.ジュルヌのブティックマネージャーも務めたという異色の経歴を持ち、正統派のヴィンテージリファレンスに深い愛着を抱く野心的で起業家精神に富んだ人物である。クラシック・ワンは、クッションケースのHN00に続くハヴィッド・ネイガンにとって2作目のケースを持つ、初のラウンド型時計である。

The Havid Nagan Classic One on the wrist
パテック フィリップスーパーコピー代引き 激安のRef.96にインスパイアされたクラシックなダイヤルレイアウトを採用したクラシック・ワンは、同様に“ドレスウォッチ”とひと括りにされがちである。しかし、それ以上の存在であるようだ。初代カラトラバや、バゼルカニアン氏が着想を得たほかのネオ・ヴィンテージモデル(その詳細は後述する)のように、このモデルも“何でもできて、どこへでもつけていける”3針時計である。クラシック・ワンは徹底してモダンなダイヤルデザインと、伸びやかなラグを備えた見事なケースフォルム、理想的なサイズバランスを特徴とする。

「クラシックなプロポーションのラウンドウォッチを作りたかったんです。そして、それは38mm径でなければなりませんでした」とバゼルカニアン氏は語る。ハヴィッド・ネイガンの創業者は、そうした信念の持ち主である。彼は自身のデザインが製品化、最終的には購入に値するものであるという確信を持っている。とりわけ彼自身のビジョンに対して確信を持っており、それは30代にしてスイスとの直接的なつながりも、時計製造における家系的背景も持たない人物としては驚くべきことであった。そしてそこに、このブランドが持つ一種の魔法がある。もし時計デザインにおける古くからの不文律が存在するとしても、バゼルカニアン氏は自分がそれを破っているかどうかすら知らないのだ。そして、それがハヴィッド・ネイガンの魅力につながっている。「自分自身のための何かを作りたかったんです」と彼は語る。「そして幸運なことに、少なくとも今のところ、多くの人々がそれを理解し、支持してくれています」。しかしクラシック・ワンに関しては、単なる幸運と呼ぶ以上のものがある。

The Havid Nagan Classic One
プロジェクトがバゼルカニアン氏の頭のなかで具体化し始めたのは、ドバイを訪れ、リテールパートナーであるパーペチュアル・ギャラリーに足を運んだときである。創業者ハムダン・アル・フダイディ(Hamdan Al Hudaidi)氏のオフィス内、フィリップ・デュフォーからバルチックに至るまでの時計が並ぶテーブルの上で彼の目を引きつけたのは、ピンクゴールドのパテック Ref.96のクリーンなデザインと完璧なプロポーションであった。「それまでヴィンテージのカラトラバを見たことがなかったんです」と彼は言う。「ミニッツトラックやダイヤル上の配置の美しさに衝撃を受けました」。旅から戻るとすぐに、バゼルカニアン氏はのちにクラシック・ワンとなるデザインに着手した。

最近、初めて新しい時計を手に取るときにひとつの新しいアプローチを試みている。これはゴルフ界のスポーツ心理学者から拝借したもので(私のYouTube履歴を語りすぎかもしれないが)、ネガティブな自己対話をするプレイヤーに対し、“感動の余地(room for wow)を残す”よう指導するというものだ。ボールを打ち、結果を観察し、意図的な結論を下さず、自然な反応を待つという方法だ。ゴルフでは「なんてひどいショットだ」となることもあれば、「これはすごい!」となることもある。時計においても、「これは自分には合わないかもしれない」や「これはかなりいいかも!」と感じることがある。

The Havid Nagan Classic One
ハヴィッド・ナガンについて記事を読み、HN00の写真を見て、2022年当時の自分は「これは自分向きではない」と早合点していた。だからこそクラシック・ワンに関しては、感動の余地を大いに残すように努めた。同じブランドの製品であっても、まったく異なる時計の評価に先入観が影響するのは不公平である。あの初代ハヴィッド・ナガンを覚えている読者には、その印象がどんなものであったにせよ、ここはぜひ最後までついてきて欲しい。

クラシック・ワンは3種のバリエーションで展開され、それぞれ異なるダイヤルを備えている。基本的には直径38mm、厚さ9mmのステンレススティールケースに、複層構造のダイヤルを採用した3針時計であり、心臓部にはCOSC認定を受けたCal.AMT6600を搭載する。細部に至るまで熟考が重ねられており、少なくとも私としてはデザインに対しての過剰との批判を回避していると評価できる。なお、試作機のひとつが今月初めにフィリップスにて出品され、フィリップ&エリザベス・デュフォー財団のためのチャリティオークションにおいて、推定価格を上回る2万5400スイスフラン(日本円で約440万円)で落札された。

The Havid Nagan Classic One movement
この時計に動力を与えるのは、AMT製の特注ムーブメントである。AMTはセリタの事業部門であり、ハヴィッド・ナガンのような独立系ブランド向けにカスタムキャリバーを専門に製造している。当初はラ・ジュー・ペレのCal.7380を使用する計画であったが、バゼルカニアン氏はその超薄型ムーブメントでは得られない、より豊かな視覚的奥行きを求めた。その結果、厚みのあるムーブメントでありながら、ケースに完璧にフィットし、一体感が感じられるという希有なプロダクトとなった。ムーブメントのブリッジにはスケルトン加工が施され、ルテニウム仕上げに加え、5Nローズゴールドの差し色が加えられている。RGの地板をはじめとする仕上げの選択は、部分的にデレク・プラット(Derek Pratt)がウルバン・ヤーゲンセンのために製作したオーバル型懐中時計からインスピレーションを得たという。COSCの認定を受けているという点も、予想外ながら好印象である。

 ダイヤルは“タマネギのように層を成している。パテック Ref.96に見られる粒状の分目盛りは現代的に再解釈され、透明なサファイアリングにプリントされており、それが2枚の真鍮製ディスクに挟まれる構造となっている。下層のディスクにはクル・ド・パリ・トロンケ(ギヨシェ)が施され、色はアイボリーまたはルテニウムだ。このギヨシェは、クル・ド・パリのピラミッドの頂点を切り取ったようなもので、オーデマ ピゲのタペストリー模様に似た視覚効果をもたらす。上層のディスクはメインのダイヤルを形成し、カラトラバ様式のバトン型インデックスを配置している。この仕上げは非常に控えめで、腕に載せた際にはフラットな光沢を示す程度である。私が扱ったふたつのバリエーションに使われていたアイボリーカラーは、1980〜90年代のショーメ時代のブレゲに見られる、ホワイトともシャンパンとも言えない中間色からインスピレーションを得たという。バゼルカニアン氏はRef.3337BAを所有しており、それをとても気に入っている。

The Havid Nagan Classic One
The Havid Nagan Classic One
The Havid Nagan Classic One
 私は現代的なケースにはうるさく“ケースクイーン”を自認しているが、このケースデザインは本当に秀逸である。38mm径というゴールデンサイズに加え、ラグからラグまでが47mmという伸びやかなラグと、随所に施された見事なディテールが際立つ。ポリッシュとブラッシュの絶妙な組み合わせに加え、バゼルカニアン氏は段差のあるベゼルについて「ネオヴィンテージのパルミジャーニ・フルリエやウルバン・ヤーゲンセンを意識しました」と語っている。また、ツイストしつつスカラップ状にえぐられたラグの造形は目を引くが、全体のデザインとの調和も取れている。

 1万ドル以下の3針時計として、これは非常に有力な候補といえる。熟考されたディテールと緻密な構造美を愛する者にとって、このモデルはまさに理想的な一本だ。“感動の余地”を残して接したあとで私が思ったのは、このハヴィッド・ナガンはもしかすると、ロンジンのトレタケやIWCのハーメットのような、クラシックでありながら万能な“現代版ミッドセンチュリーウォッチ”の決定版になりうるのではないか、ということであった。スーツにも水着にも合う、そんな時計である。

The Havid Nagan Classic One
基本情報
ブランド: ハヴィッド・ナガン(Havid Nagan)
モデル名: クラシック・ワン(Classic One)

直径: 38mm
厚さ: 9mm
ケース素材: 316L ステンレススティール
文字盤色: アイボリー、エボニー、ゴースト
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ジャン・ルソー製によるカスタムレザーオプション

ムーブメント情報
キャリバー: AMT6600
機能: 時・分表示、スモールセコンド表示
パワーリザーブ: 62時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21
クロノメーター認定: COSC認定

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