ロレックス デイトナ Ref.126508 “ジョン・メイヤー 2.0”が新登場。
新作モデルのデリバリーが始まりつつあるが、それは単なるグリーンダイヤルの一種ではない。旧モデルとの比較を通じて、その本質に深く迫る。
ロレックススーパーコピー代引き 激安が新キャリバーを搭載したランドドゥエラーを発表した際、ロレックスだけに留まらず、すべてのブランドにおいて注目をさらった。しかし、HODINKEEで得られるインサイトの一端をお見せすると、私が書いた8本の新作(もしくは再発表)デイトナについてのシンプルな記事が、その週に公開された記事のなかで(ランドドゥエラーを除いて)、ほとんどのコンテンツよりも多くの閲覧数を記録した。
Rolex Daytona Ref. 126508 "John Mayer 2.0"
このようなエピソードは、たとえ時計にわずかな調整しか加えられていなくとも、いかにデイトナが今なお熱狂的な人気を誇っているかを物語っている。今回、本当の意味で刷新されたのは、ターコイズラッカーのダイヤルにオイスターフレックスブレスレットを組み合わせたイエローゴールドモデルただひとつであった。とはいえ、どうしても無視できない存在があった。そして私たちは、それに正面から向き合う必要があると分かっていた。アンコールに応えて、"ジョン・メイヤー "が装いも新たに帰ってきたのだ。
ADVERTISEMENT
このYG×グリーンダイヤルのデイトナ(Ref.126508)の復活は、HODINKEEにとって“ひと区切り”とも言える出来事である。今から約6年前、ベン(・クライマー)がジョン・メイヤーという人物と時計収集の道のりに関するフォローアップの対談を行った際、彼はこう問いかけた。“誰もこれに気づかないなんて、どうして?”と。それこそが、オールゴールドのケースとブレスレットに、カラーダイヤルを備えたデイトナを見たコレクターが取るべき、そしてやがて実際に取ることになる反応であった。2016年に発表されたこのモデル(Ref.116508)は、ジョン・メイヤー デイトナとして知られるようになり、2023年に生産終了となるまで長らくラインナップに残り続けた(ブルーダイヤルのホワイトゴールドモデルも同時に終了)。
OG John Mayer Daytona
オリジナルのRef.116508 ジョン・メイヤー デイトナ。Photo credit Hodinkee.
YGもWGも、ともにアップデートを施されて再登場を果たした。ただしブルーダイヤルの外観は以前とほとんど変わらない一方で、いわゆる“ジョン・メイヤー 2.0”(ネット上ではそう呼ばれているが、個人的には“チェアマン・メイヤー”と名づけたかった)には、より大幅な変更が加えられている。実質的かつ実用的な進化はケースの内部にあるが、最大の変化は文字盤が醸し出す雰囲気の変化であることに異論の余地はない。旧モデルのRef.116508は、グリーンダイヤルにグリーンのインダイヤル、さらに赤のアクセントを配していた。一方で新たなRef.126508では、イエローのインダイヤルが採用されており、その佇まいは1970年代後半のヴィンテージウォッチを想起させるものとなっている。個人的にこれは非常に意義深い改良だと感じている。
Rolex Daytona Ref. 126508 "John Mayer 2.0"
その理由を理解するには、少々歴史の授業に付き合ってもらう必要がある。もしそういう話が好みでなければ、この先の比較レビューのセクションまで飛ばしてくれてかまわない。大して気にしたりは…しない(たぶん)。
モダン(およびネオヴィンテージ)デイトナのデザイン言語小史
スティール製のデイトナ、とりわけホワイトの“パンダ”ダイヤルは、多くの人にとって“聖杯”とされていることが多い。それも当然だと思う。デイトナファミリーのなかで最も手が届きやすく、着用の汎用性という点でも優れているからだ。ただ私はデイトナに対して独自の好みがあり、モダンデイトナのなかで最も好まないデザイン要素がふたつある。ひとつはイエロー、ホワイト、エバーローズゴールドのブレスレット仕様モデルに見られるメタルベゼル。もうひとつはほぼすべてのメタルブレスレット仕様のデイトナに採用されている、外周にリングをあしらったコントラストの強いインダイヤルだ。これらの要素は、それぞれ単独でも、あるいは組み合わさることで2023年にアップグレードされたばかりの最新ムーブメントを搭載する製品ラインとしては、どこか時代錯誤な“ネオヴィンテージ”感を漂わせているように感じる。これらのモデルは、過去そして私が思い描く今の完成形とのあいだに位置している。あるいは単に私が、よりヴィンテージロレックスらしいデザイン言語への回帰を望んでいるだけなのかもしれない。
16520
モダンデイトナに受け継がれているデザイン言語の源流が見て取れる、Ref.16520の一例。写真は過去のReference Pointsより引用。
このリング状のインダイヤルが初めて登場したのは1987年(正式には1988年)であり、自動巻きデイトナ第1号であるRef.16520の発表と同時であった。このモデルはあらゆる面で大きく刷新されていた。エル・プリメロをベースとしたキャリバーの搭載に加え、ケースサイズもそれまでの37mmから40mmへと拡大され、デイトナと名付けられて以来、外観において最も大きな変化を遂げたモデルだった。もちろん、このインダイヤルのリングは傾斜のついたインダイヤルを備えていたRef.6239や、その前身であるプレデイトナ Ref.6238へのオマージュだと捉えることもできる。だが私にとって、このデザインはどうしても1980年代のネオヴィンテージモデルと結びついてしまうのだ。
もうひとつ、触れておかねばならないのが、セラミックいや、“セラクロム”ベゼルである。ロレックス独自のこの素材は、いまやスポーツモデルやプロフェッショナルモデルの定番となっているが、最初にこのベゼルが採用されたデイトナのリファレンスを聞かれて、正しく答えられる人は意外と少ないだろう。その栄誉にあずかったのは、2011年に発表されたエバーローズゴールドのRef.116515であった。クリームダイヤルを備え、このモデルとしては実に23年ぶりとなるブラックベゼルを採用していた。そして2年後、デイトナ誕生50周年を記念して、ブラウンのセラクロムベゼルを備えたプラチナモデルが登場する。以降、この特徴はデイトナの主力ラインナップに次々と展開されていくことになる。ただしブレスレットと素材を揃えた貴金属製モデルの一部には、いまだこの仕様が採用されていない。
116515
Ref.116515 エバーローズ。
もうひとつ押さえておくべき背景がある。それは1990年代初頭に、シンガー社が一部の初期自動巻きデイトナ用に製作していた、サンレイ仕上げのダイヤルである。この放射状のブラッシュ仕上げが施されたダイヤルはリング状のインダイヤルと組み合わされており、1990年から1991年にかけてきわめて少量しか製造されなかった。というのも(少なくとも一般的にはそう考えられているが)この種のダイヤルには商業的な需要がほとんどなかったため、市場で展開するには不向きと判断されたからである。その代わり、こうしたダイヤルは販売用としてではなく、ロレックスの最上層部に向けた特別なプレゼンテーションウォッチとして用いられたという逸話が残っており、そこからこのモデルには“チェアマン”という愛称が与えられた。2021年には、そうしたモデルのひとつがクリスティーズのオークションで約40万ドル(日本円で約4390万円)で落札されている。ある意味で、今回の新作Ref.126508は、モダンロレックスのなかでこの“チェアマン”ダイヤルに最も近い外観を持つモデルと言えるだろう。またブルーのサンバーストダイヤルにアラビア数字を配した後年のリファレンスにも、このデザインの系譜を見ることができる(とはいえ、Ref.116523のことを忘れていても無理はないが)。
Daytona
2021年にクリスティーズで落札された、デイトナ Ref.16528 “チェアマン”。
Daytona
だからもし、あなたが私のようにデイトナの美学に対して細かいこだわりを持っているなら、おそらくはオイスターフレックス仕様のモデルに注目してきたはずだ。そこにはセラクロムベゼルとクラシックなインダイヤル構成が採用されている。実際、2023年に発表されたル・マン デイトナにおいて、私にとって“完璧な”モダンデイトナたらしめていたのは、記念モデルらしい“100”や“ロリポップ”インダイヤルの存在ではなかった。ブラックのセラクロムベゼルと、完全なリバースパンダ配色の組み合わせこそが決め手だったのだ。ル・マンはデイトナというモデルとその歴史の素晴らしさを凝縮したような存在であり、それをモダンなパッケージで、しかもメタルブレスレット仕様に落とし込んだ初めての1本であった。“ロリポップ”インダイヤルマーカーがなくとも、フル・リバースパンダの美観は、これまでで最も完成度の高いモダンデイトナのデザインに仕上がっていたと感じている。
LeMans Hands On
WGのオイスターフレックス仕様であるRef.116519LN、ル・マンモデルのRef.126529LN、そしてベンによるA Week On The Wristで登場したRef.116500LN。この3本を並べて見てみれば、左の2本がいかに“完成された”印象を持っているかは、一目瞭然ではないだろうか。
新作“ジョン・メイヤー”との対峙(もちろん比喩的な意味で)
Rolex Daytona Ref. 126508 "John Mayer 2.0"
Watches & Wondersの開催期間中、ジュネーブの会議室で深夜にロレックスのウェブサイトが更新された瞬間、まず目を引いたのは、新作デイトナ Ref.126508のインダイヤルが全面YG仕上げになっていたこと、そしてそれ以上に、ダイヤル全体に施されたグリーンのサンバースト仕上げが放つ強烈な色彩だった。グリーンのサンバースト仕上げが施されたダイヤルの、その色味の強さにも目を奪われたのだ。実機を見ていない多くのレビュー(やリール動画)では、このダイヤルこそが最も大きな変更点のひとつであると指摘されている。それは間違っていないが、完全に正しいとも言い切れない。その違いを理解するために、下に掲載したオリジナル(最初の画像)と新作(続く2枚の画像)を比較してみて欲しい。
Rolex 116508
ロレックス Ref.116508 のアーカイブ写真。
Rolex Daytona Ref. 126508 "John Mayer 2.0"
新作 Ref.126508。風防に映り込む反射がダイヤルのグリーンを引き立たせているが、そのほかの部分はよりブラックに近い色味となっている。
Rolex Daytona Ref. 126508 "John Mayer 2.0"
新作 Ref.126508 の別角度からのカット。
前世代のRef.116508と比較すると、確かにグリーンはやや明るくなったように見える。ただし、ロレックスの製品ページに掲載されている画像(おそらくレンダリング)ほど劇的な違いではない。あの画像は、影も光の角度も存在しない不自然なライティング下で撮影されており、光の当たり方によってダイヤルの高光沢サンバースト仕上げがどのように表情を変えるか、つまり実機が持つ本来の魅力をほとんど捉えていない。実際には影や柔らかな光の下では、ダイヤルのメイン部分はぐっと暗くなり、グリーンの色味はインダイヤルの放射部分や、光のハイライトが当たって緑がかすかに輝く部分でのみ現れる。たしかに違いはあるが、それはインダイヤルの明度が増したことによって際立って見える側面が大きい。場合によってはむしろ以前よりも控えめに見えることさえあるかもしれない。
Rolex 126508
Ref.126508も、前モデルと同様に“5ライン”仕様となっている。すなわち、文字盤上にはRolex、Oyster Perpetual、Superlative Chronometer、Officially Certified、Cosmographの5行の表記が並ぶ。また6時位置のインダイヤル(スモールセコンドを表示)上部には、従来同様に赤いデイトナロゴが配されている。YG調のスプレー仕上げが施された各インダイヤルの中心部には、針の軸を起点に放射状のサンバースト仕上げが施されている。その周囲には、従来の赤に代わって黄色のプリントサークルが追加されており、目盛りはマットな仕上げのなかにブラックで印刷されている。針とアプライドインデックスはYG製で、いずれもクロマライト夜光を備えている。
Rolex 126508
おそらく、今回のモデルにおける最も重要なアップデートは、新たに搭載されたCal.4131である。このムーブメントは、2023年以降のデイトナコレクションに採用されている、垂直クラッチとコラムホイールを備えた新世代のムーブメント群のひとつであり、プラチナ製デイトナ(ル・マンモデル)ではシースルーバックを通じてその姿を確認することができる(ル・マンモデルに搭載されているのはCal.4132)。初代“ジョン・メイヤー”の生産終了は、このCal.4130の終焉とも連動していた。ロレックスとしては、旧型ムーブメントと新型ムーブメントの2系統を同時に生産し続けるような体制は避けたかったのだろう。ただし同時に、製品ライン全体を一気に刷新することも望まなかったようだ。
Cal.4131は、2万8800振動/時で作動し、72時間のパワーリザーブを備える。クロナジーエスケープメント、パラフレックス・ショックアブソーバー、最適化されたボールベアリングを搭載し、前モデルのCal.4130よりも部品点数が少ない一方で、仕上げはより洗練されている。とはいえその仕上げを見ることはできない。というのも、ロレックスはこのモデルにシースルーバックを採用せず、裏蓋をクローズドに保っているからだ。個人的には、この判断に何の不満もない。ロレックスのムーブメントは、工業製品としては最高レベルの仕上がりを誇るが、それをわざわざ見たいとは思わないし、むしろ私は裏蓋に刻印ができる方が好ましいとさえ思っている。とはいえ新ムーブメントが注目の的になることはまれであり、今回もやはり主役の座を奪ったのはダイヤルであった。